川名壮志さん原作、棚園正一さん漫画による『ひみつ―佐世保事件で妹を喪ったぼくの話―』下巻が、2026年10月8日に発売されます。
2004年6月に佐世保で起きた小六女児同級生殺害事件と、その後を生きる被害者家族を描く本作。
下巻では、妹・怜美を失った兄・御手洗純一が抱えることになった深い自責の念に焦点が当てられます。
事件が起こる前、妹が自分にだけ打ち明けていた「ひみつ」。
そのことが妹の死と関係していたと知った純一は、「自分に何かできたのではないか」という思いに苦しめられていきます。
それでも家族の前では平静を装おうとする純一。しかし、抱え込んだ感情は少しずつ彼の心を追い詰めていきます。
大切な人を失ったあと、人はその喪失を抱えながらどう生きていくのか。
上巻から続く家族の記録が、その先へと進む下巻です。

妹が自分にだけ話していた「ひみつ」
下巻の重要な鍵となるのが、作品タイトルにもなっている「ひみつ」です。
事件が起きる前、怜美は兄である純一に、あることを打ち明けていました。
それは兄と妹の間で交わされた、ごく個人的な話だったはずでした。
しかし妹が亡くなったあと、その「ひみつ」が事件と無関係ではなかったことを純一は知ります。
過去に戻ることはできません。それでも、「あのとき自分が何かしていれば」と考えずにはいられない。
妹から信頼され、特に親しい兄だったからこそ、その記憶は純一の中で重い意味を持つようになります。
上巻から描かれてきた兄妹の関係が、下巻では残された兄が背負う記憶として改めて浮かび上がります。
「自分に何かできたのではないか」――純一を苦しめる自責
妹の死という現実だけでも、純一が受けた衝撃は計り知れません。
そこへ「ひみつ」の記憶が重なったことで、純一は自分自身を責めるようになります。
事件を起こしたのは自分ではない。それでも、妹から話を聞いていた自分なら何かできたのではないか――。
そうした問いには、簡単に答えを出すことができません。
起きてしまった出来事を前に、人は何度も過去を振り返り、別の可能性を考えてしまうことがあります。
本作では、その苦しみを単純な教訓や結論に置き換えるのではなく、純一が抱え続けた葛藤そのものを追っていきます。
苦しむ父の前では平静を装う純一
純一自身が深く傷ついている一方、父・御手洗恭二もまた、娘を失った悲しみの中にいます。
そんな父の姿を見ているからこそ、純一は自分の苦しみをそのまま表に出すことができません。
これ以上、父を心配させたくない。
自分まで崩れてしまってはいけない。
そうして平静を装おうとしますが、心の中にある悲しみや後悔が消えるわけではありません。
むしろ感情を押し込め続けることで、純一自身が次第に追い詰められていきます。
同じ家族を失ったとしても、父には父の悲しみがあり、兄には兄の悲しみがある。
一つの事件によって家族それぞれが異なる苦しみを抱えていく様子も、本作が描く重要な部分です。
事件が終わっても、遺された人たちの人生は続いていく
社会にとって事件は、発生し、報道され、やがて別のニュースへと移り変わっていく出来事でもあります。
しかし、大切な家族を失った人たちにとって、その出来事はニュースが終わったからといって過去になるものではありません。
昨日までそこにいた家族がいない生活を、その後も続けていかなければならないからです。
原作を手がけた川名壮志さんは、事件当時、毎日新聞社の佐世保支局に勤務していました。その後も事件について取材を重ね、御手洗家の歩みを記録してきました。
本作が焦点を当てるのも、事件が起きた瞬間だけではなく、そこから続いていった家族の時間です。
妹を失った純一が、その事実を抱えたままどのように人生を歩んでいったのか。下巻では、その過程がより深く描かれていきます。
苦しみの中で純一が見つけた「希望」とは
自責の念を抱え、父の前では平静を装いながら、少しずつ追い詰められていく純一。
そんな彼にも、その後の人生があります。
妹が亡くなった事実をなかったことにはできませんし、忘れることが再生というわけでもありません。
では、失った人を心に残したまま生きていくために、純一は何を見つけたのでしょうか。
下巻の紹介で示されているのが、苦悩の日々の先にある「希望」です。
それが何なのかは、ここでは詳しく触れず、実際の作品で見届けたいところ。
「悲しみから立ち直る」という単純な言葉だけでは表せない、喪失を抱えながら生き続けることが、本作の結末へとつながっていきます。
上下巻同時発売――一つの家族が歩んだ時間を最後まで
『ひみつ―佐世保事件で妹を喪ったぼくの話―』は、上巻・下巻ともに2026年10月8日発売です。
上巻では、純一と妹・怜美の関係、そして家族の日常が事件によって突然失われるまでが描かれます。
そして下巻では、妹から聞いていた「ひみつ」をめぐる純一の苦悩と、その後の人生へ。
事件の発生だけで終わらず、遺された家族が喪失のあとをどう生きていったのかまで続けて読むことのできる上下巻構成です。
実際に起きた事件を扱う作品だからこそ、その衝撃だけを切り取るのではなく、事件以前に存在した兄妹の日常と、事件後も続いた家族の時間まで含めて向き合いたい作品です。
ひみつ―佐世保事件で妹を喪ったぼくの話― 下
- 原作:川名壮志
- 漫画:棚園正一
- 発売日:2026年10月8日
- レーベル:バンチコミックス
- 出版社:新潮社
- 価格:902円(税込)
- 判型:B6判
- ページ数:256ページ
- ISBN:9784107729880
『ひみつ―佐世保事件で妹を喪ったぼくの話―』下巻は、2026年10月8日発売。
妹が自分だけに打ち明けていた「ひみつ」を知っていた兄。その記憶によって自分を責め、父を心配させないよう苦しみを隠し続ける純一。
それでも彼の人生は続いていきます。
妹を忘れるのではなく、失った事実を抱えながら、どのように生きていくのか。
純一が苦悩の先で見つけたもの、そして御手洗家が歩んだ時間を、上巻とあわせて最後まで見届けたい一冊です。






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