江戸から明治、大正、昭和へと時代を越え、鬼となった甚夜の長い旅と人々との縁を描く『鬼人幻燈抄』。
10巻では、幕末の動乱を前に生き方を迷っていた三浦直次が江戸を離れ、京へ向かう決断をします。
甚夜とおふうがその門出を祝おうとする一方、道中では畠山泰秀の配下である鬼・土浦が襲来し、甚夜を苦戦させるほどの強大な力を見せました。
旅立つ者を送り出す人間同士の温かさと、鬼との死闘が隣り合う一冊です。
この記事では、直次の選択や三人の関係、土浦との戦いで心を動かされたポイントをネタバレ込みで語ります。
作品名:鬼人幻燈抄(10)
作者:里見有、原案:中西モトオ
出版社:双葉社
発売日:2026年03月11日
直次が江戸を離れる、その決断が思った以上に胸へ残った
ミコ:直次が江戸を離れて京へ向かうと決めたところ、幕末の空気より先に「自分の生き方を選ぶ」重さが来て、門出なのに少し寂しくなったよね。
ユナ:その寂しさも分かるけど、私は迷った末に場所を変える決断をしたことが印象に残ったな。時代が揺れる中で、自分まで揺れている感じがしたんだよ。
サキ:直次の決断を読んだあとに、甚夜とおふうが門出を祝おうと宴席へ誘うのが好きだった。大事件の前に人とのつながりを感じられて、ちょっとほっとしたよ。
ミコ:あの誘いがあるから、直次の旅立ちを単なる物語上の移動として読めなかったんだよね。送り出そうとする二人との関係まで一緒に思い返したくなったな。
ユナ:私は逆に、祝う側の甚夜たちより直次の迷いに目が向いたよ。幕末という大きな時代の変化と、一人の生き方の選択が重なるところが、この作品らしく感じた。
サキ:時代の話まで考えると余計に切なくなるね。でも私は宴席に誘うっていう行動そのものが好きで、別れの前にも普段の人付き合いがあるのが妙に沁みたなあ。
ミコ:そこから土浦の襲撃へつながるから、穏やかな門出の空気だけでは終わらせてくれないんだよね。読んでいて気持ちを切り替える暇がない感じが強かったよ。
ユナ:その落差はかなり大きかったね。直次が新しい道を選んだ話を読んでいたはずなのに、急に甚夜たちが危険へ巻き込まれて、空気が一変するのが怖かったな。
サキ:私は読み終えてから、戦いより先に直次の門出をもう一度読み返したくなったよ。穏やかな時間がちゃんと描かれていたからこそ、あとから心に残った気がする。
宴席へ向かうはずだったのに、土浦の襲撃で空気が一変する
ミコ:甚夜とおふうが直次を祝おうとしていた道中で土浦に襲われる流れ、さっきまでの門出の空気が一気に消えて、私はかなり身構えながら読んじゃったよ。
ユナ:その切り替わりは怖かったけど、私は土浦が畠山泰秀の配下の鬼だという点も気になったな。ただ強い鬼が突然現れた、という感触だけではなかったんだよね。
サキ:そこもあるけど、私はお祝いへ向かう途中だったことがずっと頭に残ってた。楽しい時間になるはずの道中に鬼が入り込むだけで、こんなに嫌な緊張が出るんだね。
ミコ:日常に近い目的で歩いていたところへ危険が割り込むから、戦いが始まった瞬間の温度差が大きいんだと思う。甚夜の日々って本当に鬼と隣り合わせだよね。
ユナ:むしろ私は、そこで甚夜なら何とかするだろうって気軽に構えられなかったな。土浦の強大な力を前に苦戦する姿があるから、戦闘の圧がかなり違って見えた。
サキ:甚夜が苦戦を強いられるって、それだけで私は肩に力が入ったよ。普段から鬼を狩ってきた彼が簡単に押し切れない相手だと、読む側まで息苦しくなる感じだった。
ミコ:その苦戦があるから、土浦を単に次の敵として流して読めなかったんだよね。甚夜が鬼でありながら鬼を狩ってきた積み重ねまで意識してしまったな、私は。
ユナ:積み重ねを考えると、力のぶつかり合いだけを見るより面白いよね。長く生きる甚夜にも、その時代ごとに新しい人や鬼との関わりが生まれるのが印象深い。
サキ:読み終わった今でも、私は宴席へ向かう道中から襲撃へ変わるところが忘れにくいな。温かい気持ちから緊張へ急に振られて、感情まで連れていかれたよ。
甚夜が苦戦するほどの土浦、その強さにページをめくる手が止まらない
ミコ:土浦の強大さが伝わってくるほど、甚夜が苦戦する場面の緊張も増したよね。鬼を狩り続けてきた甚夜だからこそ、簡単じゃない相手だと余計に感じたな。
ユナ:私は強さそのものより、畠山泰秀の配下にこれほどの鬼がいることが引っかかったよ。土浦一人を見るだけでも、甚夜を取り巻く状況の厳しさを意識したな。
サキ:二人の話を聞くと怖さが増すけど、私はやっぱり甚夜が押されるような戦いになると感情が揺れるなあ。強い主人公を眺める安心感とは全然違ったよ。
ミコ:確かに、甚夜って何でも力任せに片づける人物じゃないから、苦戦にもちゃんと怖さがあるんだよね。鬼である彼自身の長い歩みまで重なって見えてきたよ。
ユナ:そこより私は、戦闘が直次の門出と同じ巻に置かれていることが好きかな。人として生き方を選ぶ話と、鬼として生き続ける甚夜の姿が並ぶのが興味深かった。
サキ:そう言われると、直次には旅立ちがあって、甚夜には長すぎる旅がずっとあるんだよね。二人を並べて考えたら、最初に感じた寂しさまで少し変わってきたよ。
ミコ:その見方だと、土浦との戦いも単なる強敵戦とは違って感じられるな。甚夜が人との関わりを持ちながら鬼を狩る物語だってことを改めて意識したよ。
ユナ:私は逆に、そういう大きなテーマを考えながらも、今回は土浦の力に押される緊迫感を素直に楽しんだな。静かな人間ドラマとの振れ幅がかなり大きかった。
サキ:その振れ幅があるから疲れるのに読んじゃうんだよね。直次を祝おうとした気持ちも、土浦との死闘の怖さも同じ巻にあって、読後まで感情が忙しかったな。
鬼を斬るだけじゃない、甚夜が人と結んできた縁が沁みる
ミコ:戦いを読み終えて振り返ると、私は直次の門出を甚夜とおふうが祝おうとしたことが一番沁みたかも。鬼退治の合間にも人との縁がちゃんと続いてるんだよね。
ユナ:その縁は大事だけど、私は甚夜が人の中で生きていること自体に惹かれるな。鬼になった彼が人間との関わりを捨てずに歩いているから、別れも重く感じるよ。
サキ:それを言われると、鈴音とのことまで思い出して切なくなるよ。兄妹の過去がある甚夜だから、誰かの門出を祝おうとする姿にも私は弱いんだよね、本当に。
ミコ:過去を知っているほど、今そばにいる人との時間を何気なく読めなくなるよね。直次やおふうとの関係も、長い年月を生きる甚夜の物語だから余計に沁みるな。
ユナ:でも私は、切なさだけじゃなく時代が動いていく面白さも感じたよ。直次が京へ向かう決断に幕末の空気が重なることで、甚夜の長い時間まで意識させられた。
サキ:時代が変わっても甚夜は生き続けるって考えると、今ここにいる人との時間が急に貴重に見えるよね。だから宴席に誘う場面が私はやっぱり好きなんだと思う。
ミコ:そこへ鬼との戦いが入り込むのも、この作品らしい残酷さなのかもしれないね。人と関わろうとする時間と鬼を狩る時間が、きれいに分かれていないんだよな。
ユナ:もっと言えば、その二つが混ざっているから甚夜の生き方に目が行くんだと思う。強い鬼を倒すことだけなら、ここまで人との会話が記憶には残らない気がするよ。
サキ:読み終えたあとに戦闘だけじゃなく直次やおふうまで思い浮かぶのが、この巻の好きなところかな。この先も甚夜が人との縁をどう重ねるのか見届けたくなるよ。
『鬼人幻燈抄』10巻は、三浦直次の門出という人間ドラマと、甚夜を苦戦させる鬼・土浦との死闘が重なり、静かな切なさと激しい緊張を一度に味わえる巻でした。
直次を祝おうとする甚夜とおふうの関係や、幕末という時代の揺れまで感じられるのもおすすめポイントです。
鬼との戦いだけでなく、長い時を生きる甚夜が人々と結ぶ縁を丁寧に追いたくなる作品だけに、今後も時代と人間関係がどう描かれていくのか期待したいです。

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